歴史と芸術が脈動する上野の都市文脈に対し、本計画では建築そのものを彫刻的な佇まいとして捉え、街に新たな輪郭を与えることを意図した。
コンクリートの外皮は、RC造がもつ質量感と肌理を素直に表し、深い陰影が空間の静けさを際立たせている。街のスケールに呼応しながらも、歴史的情緒に埋没しない独立した存在感をもつ建築として計画した。
1階は都市に開かれたシェアラウンジとして、人が集まり、交わり、新たな発想が生まれる“触媒空間”を構成。ワーク・交流・休息が緩やかに重なり合うシークエンスをつくり、従来のオフィス像を更新する柔軟な場を提示している。
歴史性と革新性が交差する上野において、多様な働き方に応える次世代型ワークプレイスを目指した。
DATA
| 所在地 | 東京都台東区 |
|---|---|
| 用途 | オフィス |
| 設計期間・監理期間 | 2022.11-2023.7・2023.9-2025.6 |
| 敷地面積 | 362.65㎡ |
| 建築面積 | 243.27㎡ |
| 建蔽率 | 67.09%(80%) |
| 延床面積 | 2787.14㎡ |
| 容積率 | 699.68%(700%) |
| 階数 | 地上12階 |
| 構造形式 | 鉄筋コンクリート造 |
上野の文脈に調和する、彫刻のように扱ったコンクリートの外観
コンクリートを彫刻の素材のように扱い、厚みやわずかな凹凸の差異によって細やかな表情をつくり出すことで、上野の落ち着いた街並みに静かに溶け込む外観を実現した。
素材そのものがもつ質量感と肌理は、周囲に点在する文化施設や美術館の空気と自然に響き合い、場所性を損なうことなく建築の存在感を示している。
一方で、直線的なフォルムや抑制された輪郭操作により、過度に主張しない程度の新しさを建物に付与し、上野らしい静謐さを保ちながら都市的な軽さをもたらしている。
陰影の出方を丁寧に調整することで、日中には光が柔らかに揺らぎ、夜間には最小限の光が輪郭を静かに浮かび上がらせる。歴史と現代性が自然に重なり合う、上野らしい佇まいを目指した外観である。