敷地は墨田区墨田三丁目、準工業地域と商業地域の境界線上に静かに横たわる整形の一画である。そこにRC造地上9階建、46戸の共同住宅を立ち上げる。雑多な街のエネルギーと、住まいの密やかな時間をチューニングするように、ボリュームは高さ制限に従い段状にセットバックし、スカイラインに柔らかなリズムを刻む。門型に構えたエントランスは街路に対する閾値として働き、商業の喧噪から居住領域へのモード変換装置となる。ファサードは色違いのタイル、透過と反射を織りなすガラス、陰影を制御するルーバー、薄いアルミパネルをピクセルのように配置し、その素材切り替えのバランスを慎重に調律しながら、構造グリッドと開口のモジュールに呼応させ、用途混在の街にふさわしい多層的な表情を獲得する。整形敷地の矩形性は、効率的な住戸プランと設備シャフトの合理的な配置を可能にし、躯体と仕上げの納まりはディテールレベルで最適化される。こうして技術的要件の集積は、やがて住民の生活音や窓辺の灯りと混ざり合い、墨田三丁目という地点にだけ現れる、ひとつの都市断面を描き出していく。
DATA
| 所在地 | 東京都墨田区 |
|---|---|
| 用途 | 共同住宅 |
| 設計期間・監理期間 | 2021.10-2023.11 |
| 敷地面積 | 614.61㎡ |
| 建築面積 | 421.30㎡ |
| 建蔽率 | 68.50%(100%) |
| 延床面積 | 2,695.43㎡ |
| 容積率 | 312.30%(313.10%) |
| 階数 | 地下0階・地上9階 |
| 構造形式 | RC造 |