本計画は、さいたま市に所在する2階建て全15戸の賃貸住宅であり、単身者からファミリー層までを対象としている。
外観は、ハコ状ボリュームを意図的にずらすというシンプルな形態操作を基軸とし、これにより発生する段差や奥行きを活用して、複数の立体的空間が合理的に連動する構成としている。
配置計画においても、並列に配置されたボリュームのわずかなずれが外部空間に奥行きと変化を与えている。
1階では、隣地および道路境界付近まで建物ボリュームを寄せつつ中庭を形成し、2階ではその上部をバルコニーおよび共用廊下として有効利用している。
建物は2階建てであるが、内部構成として8つの異なるレベルを持つスラブを設定し、大小さまざまな空間が重層的に展開する構成としている。
天井高さは約1.2mから4.2mまで幅を持たせ、床面積も約2.9畳から15.4畳まで多様なスケールを確保している。
4タイプの住戸それぞれにおいて、これらの大小空間が異なる形で連続し、独自の空間体験を生み出している。
集合住宅は敷地条件や法規制により計画手段が一定程度固定化されやすいが、本計画では事業性を前提にしつつ、明快なデザインコードを導入することで、従来とは異なる建築的価値の創出を目指している。
【第42回東京建築賞 共同住宅部門 優秀賞 受賞】
【2015年度グッドデザイン賞 受賞】
【Floor Plan Manual Housing掲載】
【東京都建築士事務所協会誌「コア東京」 2017年6月号掲載】
【新建築 2014年8月号掲載】
【KJ 2014年6月号掲載】
【LiVES 2014年5月号掲載】
DATA
| 所在地 | 埼玉県さいたま市 |
|---|---|
| 用途 | 共同住宅 |
| 設計期間・監理期間 | 2012.2-2014.3 |
| 敷地面積 | 549.55㎡ |
| 建築面積 | 356.08㎡ |
| 建蔽率 | 64.79% |
| 延床面積 | 565.17㎡ |
| 容積率 | 96.85% |
| 階数 | 地上2階 |
| 構造形式 | 鉄筋コンクリート造一部鉄骨造 |
「ハコ形状をずらす」操作による表現
本計画では、極めてシンプルな「ハコ形状をずらす」という操作を起点に、建築全体に多様な立体的仕掛けが有機的に絡み合う構成とした。
わずかなボリュームのずれにより、内部と外部の双方に陰影と奥行きをもたらし、単純な形態操作を越えた豊かな空間体験を構成した。
ずらされたハコ同士が生み出す隙間や段差は、光の入り方や視線の抜けに変化を与え、建築全体に柔らかな動きを宿している。
また、周辺建物との調和を図るため、建物の高さは慎重にコントロールし、2階建てにロフトを重ねた抑制の効いた構成としている。
周囲のスケールを尊重しながらも、内部には立体的な広がりを確保することで、コンパクトさと開放感を両立させ、周辺環境に溶け込みつつも個性を失わない建築を目指した。
「ハコ形状をずらす」操作による中庭
配置計画においても、並行に並んだハコを意図的にずらすことで、周囲の環境と連続しながらも独自の奥行きをもつ外部空間が立体的に立ち上がるよう構成している。
1階では、ボリュームを隣地境界と道路際ぎりぎりまで寄せることで、中庭側にできるだけ広い余白を確保した。
これにより、外部に対して開かれたゆったりとした住戸アプローチ空間が生まれ、敷伸びやかな導入体験を実現している。
中庭側のハコがオーバーハングする部分は、そのまま玄関庇として機能し、来訪者を包み込むような適度な陰影をつくり出している。
一方で、2階の外側へ向かってセットバックした部分は共用廊下やバルコニーとして活用され、外部と内部の中間的な場として、日常的な滞在や視線の広がりを支える要素となっている。
その結果として、ハコ同士がずれることで生じた隙間や重なりが、光・風・視線といった外部環境を多層的に受け止め、内部と外部の境界を柔らかく編み上げる。
単なる配置の工夫にとどまらず、建築全体に立体的なリズムと一体感をもたらしている。