都市の高密度なコンテクストにおいて、空へと垂直に伸びるスレンダーなプロポーションと、視点によって劇的に表情を変える二面性が、本建築の際立ったアイデンティティである。
側面のファサードは、巨大な壁面が持つ圧迫感を意匠へと昇華させるため、ランダムな目地割りと黒い垂直ラインの反復によって幾何学的なリズムを刻んでいる。この彫刻的なディテールは、陽の移ろいとともに陰影を深め、都市的なスケール感の中で確かな存在感を放つ。対照的に住戸の主開口となるバルコニー面は、水平ラインを強調した軽快な構成としつつ、軒天に施した木質素材が温かみのある表情を添えた。硬質なコンクリートと有機的な素材のコントラストは、都市の喧騒と住まいの安らぎという二つのコンテクストの調和を意図したものである。足元には植栽によるバッファを設け、無機質になりがちな高層建築の接地性を柔らげ、街並みへの接続を図った。
居住性の面では、道路斜線制限を活かしたルーフバルコニーと連続する大開口LDKや、5mの吹抜けを持つメゾネット住戸を計画。2層分の開口により、垂直方向への光の広がりと圧倒的な開放感を実現している。
DATA
| 所在地 | 東京都台東区 |
|---|---|
| 用途 | 共同住宅 |
| 設計期間・監理期間 | 2022.02-2023.09・2023.11-2025.09 |
| 敷地面積 | 502.95㎡ |
| 建築面積 | 273.36㎡ |
| 建蔽率 | 54.35%(100%) |
| 延床面積 | 2861.88㎡ |
| 容積率 | 479.95%(480%) |
| 階数 | 地上14階 |
| 構造形式 | 鉄筋コンクリート造 |
分節とレイヤーによる表情の創出
マッシブな壁面構成に対し、バルコニー面では、単調な積層となることを避けるため意図的な分節化を試みた。水平ラインを強調しつつ、構造や手摺壁に細やかな凹凸を設けることで、ファサードに物理的な奥行きと視覚的なリズムを創出。画一的になりがちな高層集合住宅の表情に深みを与えている。
また、ソリッドなグレーの外壁と対比させるように、軒天には木目調素材を配して温かみのあるアクセントとした。無機質な表情の中に有機的な要素を重ね合わせることで、都市的な緊張感を和らげつつ、建物全体に品格を与えている。敷地の制約をデザインの駆動力へと転換し、法規制が導いた独自のシルエットの中に豊かな表情を内包させた建築である。