本プロジェクトは、都市の利便性と落ち着いた住環境を両立させることを目的に計画された集合住宅です。敷地奥へと伸びるアプローチ空間には、多様な樹種による豊かな植栽を設け、外部の喧騒から緩やかに切り離された静穏な空気を生み出しています。四季の移ろいが感じられる緑の連なりは、居住者を私的な領域へと導くプロローグとなり、帰宅時に心を整える“迎えの仕掛け”として機能します。エントランスは重厚な石壁と深い庇により、建物の品格と安心感を象徴する堂々とした表情を形成しました。外観は水平ラインを基調に端正な構成とし、バルコニー奥行きや手すりの陰影が立体的で落ち着きある佇まいをつくり出しています。周辺の低層住宅地との調和を図りながら、採光・通風・眺望を最大限に確保する住戸計画を行うことで、日々の暮らしに上質な快適性を提供。アプローチ、植栽、建築が一体となり、住む人に長く愛される住環境を実現しています。
DATA
| 所在地 | 千葉県市川市湊新田6 |
|---|---|
| 用途 | 共同住宅 |
| 設計期間・監理期間 | 2019.07-2019-11・2020-01-2021.04 |
| 敷地面積 | 404.60㎡ |
| 建築面積 | 996.73㎡ |
| 建蔽率 | 41.63%（60%） |
| 延床面積 | 4040.57㎡ |
| 容積率 | 156.90%（200%） |
| 階数 | 地上6階 |
| 構造形式 | 鉄筋コンクリート造 |
建物中央へと導く直線的なアプローチと、両側に配された細い街路樹がつくる緑のトンネルにより、都市の中にありながら別世界のような静けさを演出している。足元と樹木を照らすライティングは、昼夜で異なる表情を与え、奥に立ち上がる住棟の陰影あるファサードと連動して、立体的で奥行きのある住環境を生み出している。バルコニーをずらしながら積層させた立面構成により、各住戸のプライバシーと眺望を確保しつつ、リズミカルな陰影を生み出す。周辺の低層住宅とのスケール差を、植栽帯や水平ラインでつなぎ、街並みに開かれた現代的集合住宅を目指している。光・緑・建築が連続する一本の軸線が、この場のアイデンティティとなっている。
室内は、木目を基調とした温かみのあるトーンで統一され、落ち着いた居住空間をつくり出している。床材と建具の木の表情が柔らかく連続し、コンパクトながらも広がりを感じられる構成。キッチンはカウンター型で、リビングとのつながりを保ちながら手元の程よい囲われ感を確保している。天井のダウンライトが陰影を整え、無駄のないシンプルな壁面と相まって、すっきりとした印象に。引き戸を活用した可変性のある間取りは、ワンルームとしても個室区切りとしても利用しやすく、暮らし方の幅を広げる。全体的に機能性と心地よさを両立した、日常に馴染む住空間となっている。
