本計画は、池尻大橋駅からほど近い近隣商業地域に位置するテナントビルであり、周囲に連なる低層の街並みに対して、新たな賑わいと視覚的なアクセントをもたらす都市型商業建築である。物販店舗や飲食店の入居を想定しており、とりわけ夕景から夜間にかけての表情を重視することで、歩行者や生活者にとって魅力的な街路シーンを創出することを目指した。
外観は、メタルメッシュの柔らかで繊細な表情をまとった特徴的なファサードとし、日中は光を受けて軽やかに揺らぎ、夕景では内部の明かりを柔らかくにじませるスクリーンとして作用する。メッシュ越しに見えるテナントの活動や人の動きが、建物そのものを街に開いた“灯りのファサード”として機能させ、都市と建物の関係をより親密なものとしている。
敷地は日影規制の影響を受けるため、上階へ向かってボリュームが後退する形状が求められたが、このセットバックを単なる制約として扱うのではなく、外観の立体的なリズムや奥行きを生むデザイン要素として積極的に取り込んだ。メッシュの連続する縦ラインと、後退しながら立ち上がる建物形状の陰影が重なることで、細やかな素材感とダイナミックなフォルムを併せ持つファサードを実現している。
また、低層部は視認性と誘導性を高めるため、大開口のガラスとメッシュを組み合わせ、店舗の活動が街路へ自然に滲み出す設えとした。これにより、歩行者の視線が吸い寄せられるような魅力的なアプローチを形成し、テナントの多様な使われ方に応じて変化する都市の風景を生み出している。
本計画は、周辺環境との調和と新たな表情の創出を両立させ、池尻大橋の街並みに静かに存在感を示す、機能性とデザイン性を兼ね備えたテナントビルである。
DATA
| 所在地 | 東京都世田谷区 |
|---|---|
| 用途 | 店舗、事務所 |
| 設計期間・監理期間 | 2022.07- |
| 敷地面積 | 144.79㎡ |
| 建築面積 | 100.79㎡ |
| 建蔽率 | 69.6%(80%) |
| 延床面積 | 308.01㎡ |
| 容積率 | 199.20%(200%) |
| 階数 | 地上4階 |
| 構造形式 | 鉄骨造、鋼管杭 |