ごく一般的なオフィスの応接間を、豪華絢爛な商談の舞台として再生することを目指した計画である。日常的な平凡な一室を、非日常性と高揚感に満ちた「迎賓空間」へと格上げすることをテーマとした。
この部屋に訪れる来客の多くは、大企業の重役や要職にある人々である。その特性を踏まえ、施主からの強い要望である「金」のイメージをベースに、重厚でクラシカルなアンティークスタイルの内装を提案した。艶を抑えた金色のモールディングや、深い色合いの木質パネル、重ね織りのカーペット、シャンデリアの柔らかな光が織りなす陰影によって、商談の時間そのものが特別な演出となるような空間づくりを意図している。また、過度な装飾に陥らぬよう、壁面には落ち着いたテクスチャーの仕上げを採用し、外部の喧騒を遮る重厚な建具とともに、集中して対話に向き合える静謐さと、企業の信頼感を象徴する品格を両立させている。さらに、既存オフィスとの連続性にも配慮し、動線計画や照明計画を含め、会社のブランドイメージをさりげなく印象づける「顔」としての役割を担う空間を目指した。
DATA
| 所在地 | 東京都中央区 |
|---|---|
| 用途 | オフィス |
| 設計期間・監理期間 | 2015.02-2015.05 |
| 延床面積 | 15.67㎡ |
| 階数 | 地上8階 |
concept
豪華絢爛な商談の舞台への再生
「金の茶室計画」が目指したのは、ただ豪奢さを誇示する空間ではなく、迎え入れる所作から対話の余韻に至るまでを丁寧に編み込み、商談という時間そのものを格上げするような場である。艶を抑えた金色のモールディングは、光を強く跳ね返すのではなく、手触りのある鈍い輝きとして静かに滲み、視線の端でそっと存在を知らせる。深い色合いの木質パネルは、訪れる人の呼吸を自然に整える背景となる。重ね織りのカーペットは足音を柔らかく受け止めることで、言葉の間や沈黙の意味が損なわれない環境をつくり出す。そこにシャンデリアの柔らかな光が降り注ぐことで、面と線、陰影と奥行きがゆっくりと立ち上がり、テーブルを囲む人々の表情までが穏やかに映えることとなる。
一方で、金という強いモチーフが饒舌になりすぎないよう、壁面の仕上げには落ち着いたテクスチャーを採用した。微細な凹凸は、視覚的な華やかさの代わりに、静かな密度と品位を担保する。この抑制の効いた設えが、「金の茶室」というコンセプトを現代的に成立させている。さらに、外部の喧騒や気配を遮断する重厚な建具は、閉じた瞬間に空気が切り替わるような感覚をもたらし、室内に“集中して対話に向き合える静謐さ”を確保する。音の揺らぎが抑えられることで、声のトーンや言葉の選び方にまで自然と意識が向き、互いの誠実さがにじむ。結果として、企業の信頼感を象徴する品格と、対話に必要な親密さが同居する、緊張と安堵のバランスが整った場となる。