「交流」と「賑わい」を未来へ紡ぐ新たなランドマーク
足立区千住大橋駅前に計画された本複合施設は、足立区「千住大橋駅前用地活用事業」に係る公募型プロポーザルにより選定された、まちの新たな玄関口となる建築である。東京都が推進する「みらい千住 ポンテグランデTOKYO」によって都市更新が進むこのエリアでは、対岸に円盤状の大屋根をもつ商業施設が街の核として機能している。本計画では、その象徴的な「円」というモチーフを継承しつつ、地上にとどまらない立体的な都市空間として再構成することを試みた。
「円の下に集う」から「円の上に集う」へ。建築上部に設けた円盤状テラスは、日常には人々の居場所として、浸水被害が想定される非常時には垂直避難場所として機能する多層的な公共空間である。1階には足立市場と連携した鮮魚マーケットを配置し、テラス下の半屋外空間ではマルシェなどの賑わいが街路へとにじみ出す。暮らし・防災・交流を重ね合わせ、千住の未来を支える立体的な都市拠点をつくり出した。
DATA
| 所在地 | 東京都足立区千住大橋 |
|---|---|
| 用途 | 賃貸集合住宅・物販店舗・飲食店・学童保育・スポーツ学童・診療所・学習塾 |
| 設計期間・監理期間 | 2025.02-2029.03 |
| 敷地面積 | 1790.45㎡ |
| 建築面積 | 1253.65㎡ |
| 建蔽率 | 70.01% |
| 延床面積 | 8398.04㎡ |
| 容積率 | 399.07㎡ |
| 階数 | 地下1階・地上13階 |
| 構造形式 | 鉄筋コンクリート造 |
人が集い、街が動き出す場所
千住大橋駅前に立ち上がる本計画は、駅前広場に面して開かれた構えを持ち、街の第一印象を華やかに演出するランドマーク建築である。曲線を基調とした外観と、低層部に連続するテラスや広場は、歩行者の視線と動線をやさしく導き、駅前に賑わいと滞留を生み出している。周辺エリアが今後さらに成長していく中で、本建築は千住大橋駅周辺の「ゲート」として、街の内と外をつなぐ役割を担う存在となる。日常の通過点にとどまらず、買い物やイベント、憩いの時間など、人々の多様な活動が交差する舞台として、街の記憶に残る風景を形成していく。都市の変化とともに、人々の活躍を受け止め、未来へとひらかれた駅前空間を描き出している。
円盤から広がる、街と人の新しい関係
本計画は、ポンテポルタ千住が持つ象徴的な「円盤」というキャラクターと、駅前ロータリーに広がる大きな曲線の構成を受け止め、千住大橋エリア全体に連続する美しい曲線を建築として編み直すことを目指した。建物下層部では、曲線に沿って街の広場やマルシェ空間を配置し、人の流れをやわらかく受け止めながら、多様な居場所を生み出している。上層へと連続するテラスは、イベントや憩いの場として立体的に展開し、「円の下に集う」駅前空間から、「円の上に集う」新たな都市体験へとつなげる。さらに、かつら並木通りと連動したランドスケープを計画し、地域に馴染みのある樹種を用いることで、街並みと建築が一体となった、親しみのある駅前風景を形成している。
千住ならではの交流と発信の立体広場へ
本計画では、建築の足元から上層へと、人の活動が段階的に立ち上がる空間構成を意図している。1階には足立市場と連携した鮮魚マーケットに面して「マルシェ広場」を設け、日常の買い物やイベント時の賑わいがにじみ出る場とした。交差点前には、街の動線が交わる「街の広場」を配置し、駅前の流れを受け止める都市の余白をつくり出している。2階には、多様な催しに対応できる「イベントテラス」を連続させ、建築内部と外部、街と人を緩やかにつなぐ中間領域を形成。さらに3階には、周辺の街並みを一望できる「見晴らしテラス」を設け、日常の延長として使われる開放的な居場所を計画した。各階のテラスは曲線的に重なり合い、街のスケールに呼応した立体的な公共空間を構成している。
人々を惹きつけ、賑わいの流れを生む柔らかな建築
駅前に面する低層部は、緩やかなアール形状のピロティによって構成され、人々を自然に引き寄せながら賑わいの流れを生み出す柔らかな建築表現としている。シームレスに駅からつながる曲線のデザインは、人の流れや居場所を生み出し、千住大橋駅前にふさわしいにぎわいを創出する。ゲートとしての役割を象徴する曲線的な架構の下には、歩行者が滞留し、行き交い、立ち止まる余白が生まれ、街の動きが建築の内側へと引き込まれていく。各テナントはピロティやデッキに面して開かれ、屋内外が連続することで、明るく開放的な路面空間を形成。通過点にとどまらない、人々の活動がにじみ出る駅前風景をつくり出している。
立体的に連続する人の活動と、周囲の道と調和した緑の景観が街を彩り、街全体に回遊性のある生き生きとした風景が作り出されることを目指した
街の日常を支える、鮮魚市場
1階には、敷地近くに立地する足立市場と連携した鮮魚売り場を設け、地域の食文化を身近に感じられる場を計画した。新鮮な魚介が並ぶ売り場は、買い物そのものが街との接点となり、日常の中に賑わいと会話を生み出していく。単なる商業機能としてではなく、地域に根ざした営みがにじみ出る建築空間を目指している。
また、その他のテナントについても、地域貢献を志向する店舗を誘致し、地元住民の暮らしを支える構成とした。日々の利用を通じて人と人が自然につながり、街の記憶が積み重なっていく。駅前という立地において、生活の延長として親しまれる場をつくることで、千住大橋エリアの持続的な賑わいを支えていく。
街にひらかれ、振る舞いがにじみ出るテラス空間
本計画では、各テナントのファサードをデッキやテラスに正対させることで、建築そのものが街に向かって豊かに振る舞う構成をつくり出している。店舗の活動や人の気配が自然と外部へにじみ出し、歩く、立ち止まる、腰掛けるといった多様な行為が重なり合うことで、単なる動線ではない居心地のよい滞留空間が生まれる。
テラスからは、千住大橋駅前の広がりと、その先に展開するポンテグランデTOKYOを一望でき、街の動きや変化を身近に感じられる視点場となっている。日常の利用からイベント時の賑わいまで、さまざまな時間と使われ方を受け止めながら、街の成長とともに人の関係性も更新されていく。建築は完成して終わるものではなく、街と呼応しながら、人とともに成熟していく存在として、この場所に根付いていく。
街の居場所として灯る建築
日が沈み、街に灯りが入り始めると、本建築は昼とは異なる表情で千住大橋駅前に佇む。低層部のピロティやテラスから漏れるあたたかな光は、人の活動をやさしく浮かび上がらせ、駅前の風景に奥行きと安心感を与える。鮮魚市場やカフェ、学びや憩いの場は夜も街に開かれ、帰宅途中の人々や家族連れが自然と立ち寄る光景が生まれる。
積層するテラスと曲線的な建築形態は、夜空に向かって穏やかな輪郭を描き、千住大橋エリアのランドマークとして静かに存在感を放つ。昼夜を問わず人の営みを受け止めながら、街とともに時間を重ね、成熟していく建築である。