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three-story Group Home

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新白岡に建つ少人数の暮らしを支えるグループホームである。南面に大きく開いたシンプルな矩形ヴォリュームは、見た目の控えめさとは裏腹に、日々の生活のリズムをやさしく受け止める器となる。南側には断熱性の高いサッシと軒を組み合わせ、冬は低い日射をたっぷりと取り込み、夏は直射を遮るパッシブな環境制御を意図している。室内の動線は南面採光を中心に組み立てられ、個室や共用リビングに均質な光が届くことで、時間の移ろいが穏やかな陰影となって現れる。建物を包み込むのは、広い芝生の庭である。ただ眺めるための庭ではなく、歩行訓練や外気浴、地域との交流の場として計画された屋外のリビングであり、芝生と土の蓄熱・蒸散作用が周囲の微気候を緩やかに整える。室内と庭は段差の少ないテラスでゆるやかにつながり、車椅子や歩行器でも出入りしやすいユニバーサルな縁側空間となる。周辺街区のスケールに呼応した平屋に近い高さとして、圧迫感を抑えながら空と庭の広がりを感じられるプロポーションを追求している。シンプルな形状と素朴な芝の風景が重なり合い、居住者にとっても地域にとっても、安心して立ち寄れる「大きな家」のような環境をつくり出している。

DATA

所在地 埼玉県白岡市
用途 寄宿舎(グループホーム)
設計期間・監理期間 2017
敷地面積 1,053.98㎡
建築面積 804.75㎡
建蔽率 76.40%
延床面積 808.20㎡
容積率 76.00%
階数 地下0階 地上3階
構造形式 S造

新白岡の住宅地の一角に計画されたグループホームは、住まいと施設のあいだの曖昧な領域をねらったスケール感を持つ。廊下はできるだけ短く抑え、スタッフステーションから全体が見渡せるプランとすることで、見守りと自立のバランスを図っている。音環境にも配慮し、床・壁・天井に吸音性能の高い仕上げを採用することで、生活音が柔らかく解け合う静かな内部環境を実現。広い芝生の庭は避難スペースとしても機能し、外部動線と一体で計画することで、安全性と開放感を同時に確保している。地域にひらかれたベンチや植栽帯を道路側に設け、通りがかりの人とのゆるやかな視線の交換が生まれるよう配慮している。

内部計画では、居室と共用リビングをひとつの大きな「家族の間」と捉え、扉を閉じても気配が伝わる距離感を意識している。仕上げには木質系の材料と落ち着いた色調を選び、照度を抑えた間接照明と組み合わせることで、病院ではなく住まいとしてのスケールを強調した。設備配管は天井内にコンパクトに納め、将来的な改修や介護ニーズの変化にもフレキシブルに対応できるよう配慮している。夜間には、南面の開口から漏れるやわらかな光が芝生をほのかに照らし、周辺の街並みに控えめな存在感を示す。こうした計画の積み重ねによって、入居者・家族・地域が安心して関わり合える、小さくも開かれたインフラとしてのグループホームを目指している。