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Kyodo Restaurant Project

  • 物販店舗・飲食店
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駅前ロータリーに面して静かに佇む小さな飲食店である。都市の雑踏のなかに浮かぶ“灯りの箱”として計画し、その境界をかたちづくるのが和をモチーフとした縦ルーバーである。アルミ押出形材によるルーバーは避難階段をぐるりと包み込み、構造体や手すりを視覚的に整理しながら、ファサード全体のスケールとリズムを統一している。建て主は寿司店を営んでおり、カウンター越しの所作が引き立つよう、外装にも高級料理店としての品格と静かな緊張感が求められた。夕刻になると、ルーバーの隙間からカウンター上の間接照明や行灯のようなペンダントがほのかににじみ出し、内部の気配を完全には見せずに、匂い立つような期待感だけを街路へとこぼす。視線制御、日射遮蔽、避難動線の明快な整理といった機能的要求を満たしつつ、一本一本の縦線が夜空へ立ち上る光の格子となり、駅前の風景に静かな彩りを与えている。ルーバーのピッチや開口率は、内部からの見え方と外部からの透け具合を数値的に検証しながら調整し、通りを歩く人がふと足を止めたくなる、ほどよい距離感をつくり出している。

DATA

所在地 東京都世田谷区
用途 飲食店
敷地面積 123.93㎡
建築面積 93.32㎡
建蔽率 75.30%
延床面積 369.58㎡
容積率 279.50%
階数 地下0階 地上6階
構造形式 S造

駅前のファサードは、ルーバーによる粗密で街との距離感を繊細に調整している。通りに近い部分ほどピッチを詰め、視線を受け止める層をつくり、上階に向かうにつれて間隔を広げて内部の光をにじませる。その濃淡のグラデーションが、平坦な立面にリズムを与えると同時に、段状のアイストップとして歩行者の視線をゆるやかに引き留める。階段に沿って折れ上がるラインは、動線を示すサインであり、夜には光の階段として浮かび上がる。機能としての日射遮蔽やプライバシー確保を満たしながら、粗密と段差だけで「ここから先は特別な場である」と駅前の喧噪にささやく、静かなゲートをつくり出している。

内部空間では、段状のアイストップが視線の流れをコントロールする装置として働く。エントランスからカウンターへと続く床と天井のレベル差を小さな段階で連ね、客の歩みをひと呼吸ずつ止めながら、奥の席へと視界を誘導する。その周囲を取り巻く壁面には、ルーバーによる粗密を反転させたような陰影が現れ、外部ファサードとの対話を生んでいる。密な部分は背景をトーンダウンさせ、料理や職人の手元を浮かび上がらせる舞台装置となり、粗い部分は街の気配を遠景として取り込む窓となる。段差とルーバーが互いに補い合うことで、数メートルの奥行きのなかに、完結したひとつの街路のような時間的・空間的な奥行きをつくり出している。

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