郊外住宅地の一角に計画されたサービス付き高齢者向け住宅である。台形に歪んだ敷地に対し、建物はコの字型のヴォリュームを落とし込み、駐車場を兼ねるコートヤードを中心に据えた。中庭側と外周部双方に居室を配置することで、コンパクトな動線と高い事業性を両立している。開口部は中庭に向かって大きく開き、自然光と風を内部へ深く引き込み、季節の移ろいが感じられる穏やかな生活の舞台をつくり出している。コートヤードは単なるインフラとしてではなく、入居者と家族、地域とをゆるやかにつなぐ半屋外の広場として機能し、車の動きと人の滞留が重なり合うことで日常の風景にリズムを与える。高齢者施設でありながら、終の棲家としての尊厳と、開かれたコミュニティ拠点の軽やかさを併せ持つ建築を目指した。