本計画は、建物の設計のみならず、前提条件となる土地そのものを整えるところから始まった。
地目変更を伴う土地区画整理、そして開発許可申請――いわば、計画の「土台」を形づくるための道のりである。
さらに既存敷地には防音壁や切り下げが複雑に絡み合っており、これらを工事計画と丁寧にすり合わせながら合法化していく必要があった。
関係する要素を一つずつほどき、整え、ようやく本来の建築計画がスタートしたのである。
完成した計画は3棟構成。
ひときわ高さのある主棟には、自由度の高いラーメン構造を採用し、ダイナミックな外観を生み出している。
一方、低層の2棟はコンクリート壁式構造とし、建物重量を抑えることでコスト面でも合理性を追求した。
ただし、構造形式の異なる建物が同じように揺れるはずもない。
そこで接続部にはエキスパンションジョイントを設け、構造的に切り離すことで、それぞれが無理なく揺れを受け止められるよう配慮した。
こうして法的整理から構造計画まで、多くの判断と工夫を積み重ね、ようやくひとつの街並みとして息づくプロジェクトが形になったのである。
DATA
| 所在地 | 東京都練馬区 |
|---|---|
| 用途 | 共同住宅 |
| 設計期間・監理期間 | 2021.11-2024.6 |
| 敷地面積 | 550.50㎡ |
| 建築面積 | 348.24㎡ |
| 建蔽率 | 63.25% |
| 延床面積 | 2039.25㎡ |
| 容積率 | 297.75% |
| 階数 | 地上10階 |
| 構造形式 | 鉄筋コンクリート造(柱梁構造)一部鉄筋コンクリート造(壁構造) |
敷地内に配置された3棟の建物が力強い存在感をもって写し出されている。
右手の高層棟はラーメン構造を採用し、立体的なバルコニーラインが都市景観にリズムを与えている。
一方、左側の2棟は低層のコンクリート壁式構造で構成され、建物重量を抑えることで基礎負担を軽減し、全体のコストダウンにも寄与している点が特徴である。
さらに、高層棟と低層棟では地震時の揺れ方が大きく異なるため、接続部にはエキスパンションジョイントが設けられ、構造的に切り離す工夫がなされている。
これにより、安全性を確保しながらも3棟の一体的な外観を両立させている。
青空の下で交差点を行き交う人々や周辺の商業施設の賑わいと調和し、地域の新たなランドスケープを形成している。