KANNAI FLAG は、横浜市・関内駅至近に計画された、オフィス・商業・クリニックからなる複合ビルである。周辺には横浜の歴史を象徴する港エリアや横浜スタジアム、野毛・伊勢佐木町をはじめ、横浜市旧庁舎の再整備など複数の都市拠点が集積している。さらに、現在この周辺では三つの大規模再開発が同時進行しており、伝統とモダンが交錯するダイナミックな都市更新の只中に位置している。
本計画地は、それら三つの再開発の中心点にあたる希少なポジションを占めており、エリアの未来像を方向づける「旗艦船＝FLAG SHIP」としての役割を担うことを意図した。横浜の土地に蓄積された歴史性を抽出しつつ、これからの街へ舵を切る象徴的な建築像を目指している。
ファサード計画においては、現時点で街に対して最も視認性の高い隅切り面を基点に、将来的に主ファサードとなるカーテンウォール面の成立も見据え、二つの時間軸を重ねながらデザインを進めた。現在と近未来とが連続していく都市の変化を受け止め、建物自体がその変化を導く装置となるように意図している。
上層階には入居者が利用できる貸会議室やラウンジを配置し、多様な働き方に対応しながら、企業同士の交流やコラボレーションを促す柔軟なオフィス環境を提供する。都市の新たな起点となるべく、関内の未来を象徴するフラッグとして掲げられた建築である。
DATA
| 所在地 | 神奈川県横浜市 |
|---|---|
| 用途 | オフィス、物販、クリニック |
| 設計期間・監理期間 | 2202.8-2203.4・2023.4-2024.9 |
| 敷地面積 | 287.51㎡ |
| 建築面積 | 251.13㎡ |
| 建蔽率 | 87.35%(100%) |
| 延床面積 | 2106.76㎡ |
| 容積率 | 709.28%(800%) |
| 階数 | 地上9階 |
| 構造形式 | RC造、現場造成杭 |
隅切敷地から生まれるファサードデザイン
横浜防火帯として歴史的に三層隅切RC造が連続してきたエリアに位置し、その文脈を継承しながら隅切形状を建築デザインへ積極的に組み込んだ。駅へ向かう人の流れに対して存在感を示す特徴的な壁面は、街並みの“キャンバス”として機能し、同時に都市に時間のリズムを刻む“時計塔”的役割も担う。
JR関内駅方面より
街に光る夕景デザイン
夜間に活気づく関内駅周辺の街並みに呼応し、建物の特徴である水平ラインに照明を丁寧に配置。柔らかい光が外壁を上品に浮かび上がらせ、夕景から夜景へと移り変わる時間帯に建物の輪郭が美しく際立つようデザインしている。
夕景ファサードデザイン
再開発により将来ファサードとなる
敷地北側は現在小規模建物が密集する一帯だが、将来は大規模バスターミナルの整備が予定されている。本計画では、周辺再開発によりファサードの主従が反転する未来を見据え、都市計画側との詳細なすり合わせを重ねながら、将来主景となる北面のデザインをあらかじめ構築している。
上品でモダンなエントランス
上階へと導くエントランスは、過度に主張せず静かな佇まいを意図したデザインとしている。内部へ進むほど柔らかく光が深度を示す照明計画により、自然と奥へ誘われる上品でモダンなアプローチ空間を形成した。
テナント利用へ合理的なサイン計画
商業テナントの導線計画に合わせ、入口、エントランス内部、エレベーター前、エレベーター内、各階案内、各テナント前のすべてのポイントで、入居事業者と綿密に協議したサインデザインを実施。視認性・誘導性を両立した合理的でストレスのないサイン計画としている。
最上階共用ラウンジ
テナント入居者が利用できるラウンジは、オフィスライクな落ち着いた内装の中に、廊下から続く壁面緑化やガラス、照明を連続させ、伸びやかな開放感を演出。働く人が自然と集い、気分転換や交流が生まれる場となるよう計画した。
共用ラウンジ内
入居テナントが自由に利用できるラウンジは、ランチや休憩、簡単なミーティングなどを想定し、開放感と居心地の良さを両立した空間として構成。働く合間にリフレッシュしやすい柔らかな雰囲気を持たせている。
上質なオフィス階廊下
各階にはフロア案内を設け、訪れる人が迷わずテナントへアクセスできるよう計画。奥行きの深い廊下空間は、天井・壁・床の素材感を整えながら上質でスタイリッシュな印象を与えるデザインとし、ビル全体の統一感を高めている。
フレキシブルなミーティングルーム
時間帯貸しで柔軟に利用できるミーティングルームは、モニター接続やオンライン会議に対応し、多様な働き方をサポート。少人数会議からリモートワークまで幅広いシーンで快適に利用できる、機能的で現代的な空間とした。
