首都高速に寄り添うように建つスリムなビルである本計画では、車で走り抜ける人々の視線こそを主たる「来訪者」として想定している。高速道路上からふと見上げたとき、最上階のシルエットが遠くの空に浮かび上がり、刻々と移ろう車窓のフレームに切り取られることを意図した。スリムな輪郭と水平ラインが流れる視線のなかで都市のスカイラインを軽やかに縁取り、このエリア全体のアイデンティティを示すサインのように機能する。日々の通勤や物流の往来の中で、何度も繰り返し視界に現れることで、利用者だけでなく通り過ぎる人々の記憶にも静かに刻まれていく、ささやかだが確かなランドマークとなることを目指した。さらに、昼夜で表情を変えるファサード照明やガラスの反射が時間帯ごとに異なる印象を与え、動き続ける都市のリズムと呼応している。
DATA
| 所在地 | 東京都港区 |
|---|---|
| 用途 | 飲食店、サービス店舗、物販店舗、事務所 |
| 敷地面積 | 85.45㎡ |
| 建築面積 | 70.57㎡ |
| 建蔽率 | 82.58% |
| 延床面積 | 567.39㎡ |
| 容積率 | 599.87% |
| 階数 | 地上10階 |
| 構造形式 | 鉄骨造、現場打ちコンクリート杭 |
照明による演出
繊細な縦ルーバーが軽やかなスクリーンとなって街路との境界を和らげ、都心の喧騒を受け止めながらも、奥へと誘う開かれたエントランスを形づくる。各階に忍ばせたライン照明と、屋上をぐるりと縁取る光のフレームは、日没とともに静かに立ち上がり、ファサード全体を宙に浮かぶレイヤーのように輝かせることで、都市高速を行き交う視線に強い印象を刻む。来訪者を迎える足元には、温かみのある光と質感豊かな仕上げ材を重ね、硬質な都心の風景のなかにも、人のスケールで都市のうつろいを感じ取れる、細やかな表情を与えている。歩道を歩く人々は、ルーバー越しに漏れ出す光と気配に導かれ、内部へと自然に引き込まれる。建物は昼は控えめに街並みに溶け込み、夜は光の柱として周囲のビル群とは異なるリズムを都市に与えることを意図している。こうした光の演出により、一日の時間の移ろいとともに表情を変える、都市の新しい玄関口としての役割を担うことを期待している。