本計画は、辻堂駅南口に計画された共同住宅と商業施設から成る複合開発であり、総合設計制度を活用した新たな都市拠点の再編プロジェクトである。
辻堂駅北口側はテラスモールの開業により広域集客を獲得した一方、通過点であった南口側に新たな滞留と賑わいを生み出すことを目的とした。
都市計画を読み解き、高層棟と低層棟を1敷地内に計画しアクティビティを発生させ、駅直結の回遊デッキ、交差点に面する外周動線、地上と上空を編むブリッジによって、人と時間の滞留を生む“新しい玄関口”を構想した。
加えて、辻堂という地名の由来である「村の中心に鎌倉道と十字路があり、その交差点にお寺があった」という歴史を手がかりに、交差点に面する低層棟を“現代のお堂”として位置づけ、かつての四つ辻の記憶を建築空間として再解釈した。
また、行政機関と協議を重ね、総合設計許可要綱の改訂を伴うプロセスを設計し、建築審査会での議論を経て、100mを可能とする枠組みを実現し、計画の成立へと導いた。
【設計監理:株式会社久米開発プロデュース+株式会社フィールドデザインアーキテクツ一級建築士事務所】
【外観カラーリング・住戸エントランス・プレミアム住戸 デザイン監修:株式会社グラマラス】
【3階共用部 デザイン監修:株式会社カッシーナ・イクスシー】
DATA
| 所在地 | 神奈川県藤沢市1丁目辻堂1丁目3-1 |
|---|---|
| 用途 | 共同住宅、物販店舗、飲食店、サービス店舗、銀行の支店 |
| 設計期間・監理期間 | 2019.11-2025.11 |
| 敷地面積 | 2312.01㎡ |
| 建築面積 | 1289.74㎡ |
| 建蔽率 | 55.79% |
| 延床面積 | 25455.66㎡ |
| 容積率 | 783.52% |
| 階数 | 地下2階、地上29階 |
| 構造形式 | 鉄筋コンクリート造一部鉄骨造 |
辻堂の空へ開く新たなランドマーク
辻堂駅南口に立つこの建物は、周辺でもっとも高いランドマークとなり、相模湾や江の島、そして晴れた日には富士山までを望むことができる“この地で最も高い場所”を内包する存在である。
都市景観に大きな影響を与えるスケールであることを踏まえ、外装の素材や色数を削ぎ落とし、派手さよりも凛とした品位を重視した静かな佇まいとした。
さらに、サッシや手摺に黒色を用いることで水平ラインを引き締め、全体のフォルムに明快なリズムと緊張感を与えている。
白練色とガラスを基調とした洗練された表情は、時間の経過とともに風景に溶け込みながらも、その価値が損なわれない普遍性を備え、辻堂の新しい“顔”として地域に長く寄り添う建築を目指した。
交差点に佇む“現代のお堂”
かつて辻堂には、鎌倉道と十字路が交わる村の中心があり、その結節点にお寺が建っていたという歴史がある。
本計画ではその記憶を現代に受け継ぐことをテーマとし、交差点に面して設けた3階建ての低層棟を“現代のお堂”として位置づけた。
水平ラインを重ねた外観や通りに開いた構成によって、四つ辻の象徴性を建築的に表現している。
また、この低層棟は日常の目線で親しみをもって受け止められるスケールとし、地域に開かれた存在を目指した。
一方で、全体計画は高さ100m近いタワーが都市のランドマークとして強い存在感を示す。
巨大建築が「見上げるだけの存在」になりがちな点を補完するため、遠くからの象徴性と近くでの親しみやすさを併せ持つ場づくりを実現している。
二層で編まれる回遊の動線
本計画では、上位計画で示された駅直結の回遊型デッキ構想を手がかりに、2階レベルで建物外周を巡るペデストリアンデッキを計画した。
地上レベルのロータリーはバス・タクシー・一般車の交通動線として整理し、その上空に人と自転車が安心して行き交える専用レイヤーを設定することで、交通と歩行が干渉しない明快な二層構成をつくり出している。
さらに、超高層棟に加えて計画した低層棟を橋や階段で立体的に結び、上下左右へと動きが派生するような回遊性を意図した。
これにより、駅前という通過点に“滞留”の質を持つ場所を生み出し、人の動きが自然と可視化される環境を実現してた。
意匠面ではタワー棟との統一感を保ちながら水平ラインを強調し、都市スケールの構造体でありながら、日常的に利用される歩行空間として心地よい連続性を持つデザインとしている。