社会的弱者に寄り添う「済生勅語」の精神を体現する、墨田区北部の内科系基幹病院である。鉄道高架に寄り添うように積層したテラコッタ色の水平帯が、下町のスカイラインに新たな輪郭を与え、夜間には大きな行灯のように街と患者をやさしく照らす。狭隘な道路と敷地条件のもと、既存棟を稼働させながら段階的に建替える計画とし、低層部に外来と救急、高層部に病棟とスタッフエリアを重ねて効率的な動線を組み立てた。ハートビル法の容積緩和を活用して余裕あるホワイエや待合を確保し、明快なサイン計画と木質仕上げ、洗面・トイレ付きの病室が、誰にとっても迷いにくく、尊厳ある療養環境をつくり出している。最上階には下町の景を一望する食堂とリハビリテラスを置き、入院生活のなかに日常の時間と地域とのつながりを取り戻している。都市型病院としての機能性と、済生会らしい温かい公共性を一体にした新しい街の医療拠点である。
DATA
| 所在地 | 東京都墨田区 |
|---|---|
| 用途 | 病院 |
| 設計期間・監理期間 | 2004.4~2022.8 |
| 敷地面積 | 2098.03㎡ |
| 建築面積 | 1563.88㎡ |
| 建蔽率 | 54.26% |
| 延床面積 | 6448.45㎡ |
| 容積率 | 222.51% |
| 階数 | 地下1階、地上5階 |
| 構造形式 | RC造 |