井上 裕基
Inoue Yuki
ゼネラルマネージャー 一級建築士
担当:ロイジェントパークス上野、東上野3丁目計画
森本 遼
Morimoto Ryo
プロジェクトマネージャー
秋山 曜
Akiyama Hikaru
担当:ロイジェントパークス上野
内田 千尋
Uchida Chihiro
担当:東上野3丁目計画
野田 快斗
Noda Kaito
川端 瑛里
Kawabata Eri
近年、上野地域では海外観光客の増加を背景に、ホテル、共同住宅、オフィスなど多様な用途の建築開発が進んでいる。上野恩賜公園を中心に美術館や文化施設が集積するこの地において、「彫刻」を共通のコンセプトにオフィスと2棟の共同住宅を計画した。各建築は敷地形状や法的条件など異なる制約を受けながらも、構造や素材、形態の操作を通じて建築を“彫刻”として捉え直したプロジェクト。
彫刻的な建築表現 VORT ueno plus
Q: プロジェクト概要を教えてください。
歴史と芸術が脈動する上野の都市文脈に対し、本計画では建築そのものを彫刻的なマッスとして捉え、街に新たな輪郭と気配を与えることを意図した。東上野に建つ12階建てのオフィスビルであり、塔状比の高さから通常は鉄骨造が選択される規模だが、近年の鉄骨価格の上昇と、上野が持つ素朴で力強い都市性を踏まえ、あえてRC造を採用した。高強度コンクリートを用いることでスレンダーなプロポーションを成立させ、素材の質量感と肌理が深い陰影を生み、静謐な佇まいを獲得しています。
1階は都市に開かれたシェアラウンジとして、人が集まり交流が生まれるを構成。ワーク、コミュニケーション、休息が緩やかに連続するシークエンスを設計し、従来のオフィス像を更新する柔軟な都市装置として機能させています。
歴史性と創造性が交差する上野という場において、多様な働き方に応える次世代型ワークプレイスを目指した計画です。
Q このプロジェクトにおける制約や課題について教えてください。
東上野に建つ12階建てのオフィスビルであり、当初は鉄骨造で計画していたが、建設費の高騰を受け、基本設計の中盤で構造方式を再検討しました。鉄骨価格の上昇と上野が持つ素材感の強い都市性を踏まえ、あえてRC造へと舵を切り、高強度コンクリートを採用することでスレンダーなプロポーションを実現しました。過度な装飾を排して素材そのものの力強さを塗装仕上で引き立てることで、コストを最小限に抑えつつ、上野らしい彫刻的な建築表現へと収斂させることを実現できたと思います。コストという制約があったからこそ、より土地に根差した唯一無二の建築を創出することができたと考えております。
街並みとの調和と居住性の両立 ロイジェントパークス上野
Q: プロジェクト概要を教えてください。
総戸数48戸の賃貸向け共同住宅です。30~50㎡程の一般的な1LDK~2LDKを中心に構成されています。さらに、130㎡の最上階フロア全体を使った住戸と、100㎡の吹抜メゾネット住戸の2戸をプレミアム住戸として計画しています。
Q このプロジェクトにおける制約や課題について教えてください。
本計画の課題は、街並みとの調和と居住性の両立でした。
外観デザインでは、西洋美術館の造形的特徴を参照し、彫刻的なRC打放し仕上げを構想しました。RCのもつ質感と量塊感は、上野という文化的文脈に呼応しながら、都市スケールの中で確かな存在感を生み出すものと考えました。一方で、計画地は東上野の低層住宅地に隣接しており、14階建てのマッシブな構成は、周辺の下町的な街並みとの間に隔たりを生む可能性がありました。RC打放しの力強さを保ちながらも、下町の柔らかな風情とどのように調和を図るか。それが本計画のテーマでした。
また居住性の面では、単純に積層された14階建てのマンションを、どのようにして快適で、開放的な住空間へと昇華させるかが課題でした。
Q それぞれどのように解決したのでしょうか。
街並みとの調和に向けては、バルコニーを街区スケールに合わせて細やかに分節し、グレーのマリオン材を用いることで垂直方向のリズムを与え、圧迫感を和らげました。さらに、バルコニーには木目調塗装を施し、木造家屋が多い周辺環境と素材感で調和するよう配慮しました。道路に対しても引きを取り、緑化された空地を設けることで周囲への圧迫感を軽減しました。
居住性の向上においては、前面道路による厳しい道路斜線制限の影響で天空率により削られた上部を、最上階住戸のルーフバルコニーとして積極的に活用しました。その開放的な外部空間に面して大開口を設けたLDKを配置することで、明るく伸びやかな居住空間を実現しています。
また、メゾネット住戸では約5mの吹抜け空間を設け、2層分にわたる大開口を計画することで、垂直方向の開放感と光の広がりを感じられる、開放的な居住体験を創出しました。
制約そのものを造形へと昇華 東上野3丁目計画
Q: プロジェクト概要を教えてください。
本計画は、総戸数26戸の賃貸共同住宅です。25㎡と40㎡の1DK・1LDKで構成され、1フロア2戸のみを配置した14階建てのスリムな塔状建築となっています。
Q このプロジェクトにおける制約や課題について教えてください。
敷地の間口と前面道路の幅員がともに狭く、道路斜線制限が非常に厳しい条件でした。天空率を確保しつつ容積を消化するためには、平面形状から立面のプロポーションに至るまで、わずかな寸法操作にも高い精度が求められました。
また、塔状比が6を超える細長い構造となるため、構造計画・設備計画・階高設定などの調整が極めてシビアであり、施工性と居住性の両立が大きな課題でした。さらに、延べ床面積が1,000㎡を超えると条例適合義務が発生するため、容積緩和を踏まえた面積配分を慎重に検討し、限られた条件の中で最大限の計画を行いました。
Q 解決へのアプローチをお聞かせ下さい。
道路斜線への対応としては、天空率を最大限に活かし、平面的な間口を限界まで広げたうえ居住性を損なわない範囲で階高をギリギリまで抑制し、14階建てを成立させました。
外観デザインでは、天空率を稼ぐためにバルコニー手摺を緩やかな曲面で構成し、建物全体を削り出すように整形しました。これにより、法的制約をクリアしながらも光を柔らかく受け止め、陰影を生み出す彫刻的なファサードを実現しています。この曲面は単なる造形ではなく、制約による必然から導かれた形態であり、合理と美が融合した象徴的な意匠となっています。
また、共用部は屋外階段の開放性を活かして最小限に抑え、廊下の一部を階段と法的に整理することで、限られた平面の中に効率的な動線と快適な住戸間取りを成立させました。
本建築は、都市のスリットのような敷地に立ち上がる彫刻的なスリムタワーとして、制約そのものを造形へと昇華させた象徴的な存在となります。